サイズ:H130 x W 275 x D38 mm
素材、技法:木パネルにアクリルペイント、彫刻、樹脂
制作年:2021
・作品裏に壁掛け用の金具をつけて発送することも可能です。コメント欄にその旨ご記載ください。
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Panta rhei - 万物流転
「水面を眺めていたら、いつしか私は水中から水面を眺めていた」ー
現代の人間社会は価値と信用で成り立っている。無論、そこには反対物として勘違いや裏切りが存在する。そしてまた地域ごと個々によって価値観は変化する。
ではその社会基盤となる価値というものは存在するのだろうか。はたまたその基盤における盤石性すら危ういということになれば我々の社会そのものが脆く儚いものであるということを認めねばなるまい。
かつてカール・マルクスは資本論の中で貨幣における架空の共通認識について「命がけの飛躍」という言葉を使用した。
また平安時代はそうした動的な世界の有様を「うつろひ」「諸行無常」という言葉で表現した。
価値は評価によってつけられるが、その評価の基盤になる価値観は所詮他人のものだ。そんな危ういものを基盤として「ある」という前提条件のもと架空の共通認識のうえで社会を営んでいるというのが我々の脆く儚い現実なのだ。
無論このことは人間だけでなく、山や川などの自然、そしてウイルスにも当てはまる。
例えば、ある人物が今日も明日も同一人物であるとしても実際には時の経過とともに老いていくという事であるから、同一人物を後に見たならばそれが同一人物であるとは確定できない。あなたという存在もまたうつろひの中にいて、諸行無常からは逃れ得ない。
新型コロナウイルスは人間を滅ぼすアンゴルモアの大王のごとき扱いを受けているが、一方ではウィルスは生物史において遺伝子の橋渡しをしてきたことで進化の立役者ではないかとも言われている。もしかしたらそのうち新型コロナウイルスも新型などではなくなり風邪という症状の一部になるかもしれない。
地上で占有を宣言し価値を決め盤石な富を生み出すと思い込まれている不動産も、都市部の崩壊と共に「売買の対象物としての土地」から「生きるための大地」への価値の変転により「過去の過ち」と化すかもしれない。
ヘラクレイトスはこのような万物流転を「誰も同じ川に二度入ることはできない」という言葉で表現した。
世界をすっぽりと覆ってしまった暗雲の渦中にいる時こそ、価値の変転、諸行無常を受容し多様な価値観を持つべきではないだろうか。